飛騨市神岡町にある特別養護老人ホームたんぽぽ苑の外国人介護人材について(これまで)
岐阜県飛騨市神岡町にある特別養護老人ホームたんぽぽ苑における、外国人介護人材の活用について、現状(2024年2月時点)についてまとめます。
特別養護老人ホームたんぽぽ苑については、ホームページをご覧ください。
外国人介護人材の受入れ
外国人介護人材の受入れについては、現在下記4つの制度があります。
- EPA(経済連携協定)
- 在留資格「介護」
- 技能実習
- 特定技能
たんぽぽ苑では、このうち、令和2年に技能実習の受入れ、令和3年にEPA及び在留資格「介護」の受入れの、3制度について受入れを行っております。
きっかけ
たんぽぽ苑が外国人人材の受入れを始めたのは、平成27年に増床した特別養護老人ホームが職員不足により稼働できなかったことから始まります。
当時、多くの方から特養への申込という需要に応えるため58床の定員を20床増床し78床としました。
しかしながら、過疎地でもある飛騨市神岡町の立地という特性から、職員募集に困難を極め、少しずつしか職員が集まりません。特に、特別養護老人ホームという職場なので、夜勤ができる職員が必要となるわけですが、介護はしたいけれども夜勤職は敬遠したいという方もあります。結果、平成27年に増床したのですが、満床になったのは平成30年でした。
この時期、職員から出た提案によって働き方の工夫を行い夜勤職員を確保しながら運営していましたが、それでも限界がありますし、今後のことを考えると多くの需要に対してこの体制を維持できていくのか不安が募りました。
このようなことをきっかけに、外国人介護人材の活用について検討することになったわけです。
たんぽぽ苑における外国人介護人材受入れの様子
※令和6年(2024年)以降は予定
EPA(経済連携協定)
まず、EPA(経済連携協定)にチャレンジしました。
平成27年からEPAを受入れている施設の視察(視察先の皆様には本当にお世話になりました。ありがとうございます。)や、職員寮の準備などを進め、ようやく平成29年に国際厚生事業団へ求人の申込を開始。
一番最初の現地面接では、41名もの候補者がブースに説明を聞きに来てくれましたが、「先輩はいますか?」という質問があったりで、応募者の不安に応えられる最初のとっかかりやきっかけを作るのが非常に難しいことを感じました。先輩がいることで安心するということは、自分に置き換えても容易に想像ができます。とすると、どうやったらその応募者に最初の先輩になってもらえるのか。ということを考えなければいけません。
平成29年、30年の2年間はEPAの応募者とマッチングできませんでしたが、3度目の正直、令和元年にインドネシアの介護人材とマッチングが叶い、研修期間を経て令和3年に2名受入れることができました。
ちなみに、応募者とのマッチングは、ホームページで公開されるのですが、まるで合格発表のようでドキドキしたのを覚えています。最初2年間マッチングできなかった時の落ち込み度合いは今でも胃がキリッとしますが、マッチングできた時は本当に応募者に感謝しました。
技能実習
EPAにチャレンジしている中、平成29年11月に技能実習の対象職種に「介護」が追加されたことで、技能実習「介護」の受入れも考えたいと検討を始め、そのような検討状況をあちこちで話していた時に、たまたま十六銀行のご紹介を受けて岐阜県郡上市にあるヒト・ケア事業協同組合をご紹介いただきました。
ヒト・ケア事業協同組合の代表者の方や担当者の方と話を進め、令和元年現地面接などを経て、令和2年にベトナムの介護人材3名を受入れることができました。
スピード感でいうと技能実習が受入れまで一番早いと思います。面接から8ヶ月~1年程度となります。
在留資格「介護」
EPAと技能実習の受入れに全力で取り組む中、令和元年10月に、飛騨市と連携協定(地域若手介護人材育成に係る連携協力に関する協定)を結んでいるサンビレッジ国際医療福祉専門学校より、次年度留学生を受入れる予定があり、卒業後の採用や奨学金について相談がありました。
このとき初めて、岐阜県に日本語を学びに来て、その後介護系の学校に留学する方たちがいらっしゃることを知りました。
介護福祉士養成施設を卒業する留学生は、在留資格「介護」を取得できます。(※介護福祉士の資格要件や経過措置等あり。詳しくは在留資格「介護」を調べてください)
2年間の養成期間はありますが、平成29年に奨学金のシステムを作っていたので、日本人と同様に奨学金を出すことは可能と考え、日本語学校とサンビレッジ国際医療福祉専門学校との連携の中、2名の面接を行い奨学金貸与が決定され、令和4年にネパールの介護人材2名を受入れることができました。
以後、毎年面接を行い順次受入れをしています。
これまでの受入れ状況時系列
EPA | 技能実習 | 在留資格「介護」 | |
---|---|---|---|
平成27年 | 準備開始 | ||
平成28年 | |||
平成29年 | 求人申込開始 マッチングできず | ||
平成30年 | マッチングできず | 準備開始 | |
平成31年 令和元年 | マッチング成立 | 現地面接 採用決定 | 準備開始 面接し奨学金貸与決定 以降毎年新規面接あり |
令和2年 | ベトナム 3名 | ||
令和3年 | インドネシア 2名 | ||
令和4年 | ネパール 2名 | ||
令和5年 | 1名帰国 2名は特定技能として他施設へ | ネパール 2名 インドネシア 3名 | |
令和6年 (予定) | ネパール 2名 インドネシア 1名 | ||
令和7年 (予定) | ネパール 1名 | ||
令和8年 (予定) | ネパール 1名 ベトナム 1名 |
令和6年2月現在、EPA2名、在留資格「介護」7名、計9名が働いています。そして今春4月には3名増え12名となる予定です。
飛騨市の支援
特別養護老人ホームが満床にできず人材確保に動いていたのは、たんぽぽ苑だけではなく、飛騨市も介護人材不足を地域の重要な課題として捉え、積極的な政策を打ち出し、人材確保に向け一緒に取り組んでいただきました。
主な支援
- 空き家社宅化支援事業
- 医療・介護等専門職員賃貸住宅家賃補助事業
- 外国人介護人材確保推進事業(EPA、技能実習生)
- 介護技術・知識指導者雇用支援事業
- 医療・介護等専門職員U・Iターン就職奨励金
- サンビ校介護福祉士候補留学生支援
- 修学中の家賃補助
- 入学祝金
- 就職準備金貸付
- 外国人介護福祉士(家族帯同世帯)支援事業
下記は令和5年度の医療・介護・福祉人材確保対策補助制度ですが、こちらを見ていただけると如何に飛騨市がきめ細やかな制度によって地域の課題に対応しているかがわかるかと思います。
たんぽぽ苑(社会福祉法人神東会)における整備等
- 共通)職員寮整備(3か所、13部屋確保)
- 共通)家電、家具整備
- 共通)Wi-Fi整備
- 共通)日本語講師(教員OB)
- 留学生)奨学金貸与(月3万円/人)
- 留学生)県社協奨学金保証人
- 留学生)アパート保証人
- 留学生)引っ越しの手伝い
効果と課題
効果
- 慢性的に不足していた介護職員(特に夜勤ができる)不足が充足してきた
- 外国人介護人材の働きぶりに、日本人職員が刺激され、職場が活性化した
- 外国人介護人材は土日に休みたいということがない(むしろ平日の方が空いていたり安かったりする)ので、日本人との勤務のバランスがとれた
- 入居者、利用者からの評価も高く、馴染むのに時間がかからなかった
- 他国の文化を学ぶことができる
課題
- 介護福祉士国家試験対策
- アパート等の確保
- 在留資格介護については、家族帯同が認められるため、アパートの確保、配偶者の仕事の確保が難しい
- 同じ宗教を信仰している職員が複数いると、断食期間が重なるなどで勤務が組みづらいことがある
地域との交流
ベトナムの技能実習介護人材3名が就職した令和2年から令和4年にかけての3年間は、まさに新型コロナウイルス感染症が流行した時期です。特に介護現場では、コロナやインフルエンザを持ち込まないよう最善の注意を必要とし、外出もままならず、気軽に外でご飯を食べることもできないことから、地域の人との交流ができませんでした。
令和5年の新型コロナウイルス感染症も5類になるタイミングで、地域の人との交流が生まれてきました。
飛騨市神岡町には外国人との交流を促進する2つのグループがあり(一つには私も関わっておりますが)、いろんな交流会を企画していただき大変ありがたく思っております。
まとめ
外国人介護人材の確保には準備期間を含めて大変時間がかかります。留学生の場合ですと奨学金制度や、保証人などのノウハウも必要となってきますので、今後の介護人材確保に向けては、早く取り組んでいくことが重要なのかなと感じています。
また、日本人介護人材の採用と同様に、日本人・外国人関係なく介護人材の採用を引き続き進めていきたいと考えています。
次回の予告
次回、たんぽぽ苑に来てくれている外国人介護人材から日本での生活はどう?など、率直な感想を聞いてみたいと思います。また、受入側の職員の感想や地域の方などの意見も載せられたらと思います。
追記:2024年4月12日インタビューを掲載しました。